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【感想】それでも蝶は舞う(ナビレラ)|70歳の老人と23歳の若者が夢を追う姿に胸打たれる名作!

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  1. 当記事は漫画アプリcomicoにて掲載されていた「それでも蝶は舞う」を読んでの感想になります。
    ピッコマなど、他の場で掲載されるもの、実写ドラマとは内容や翻訳の解釈などが異なる可能性があります。
  2. comicoでは「それでも蝶は舞う」の掲載が2020年10月31日で終了しています。
    掲載終了までに購入している場合は引き続き読めます。
    2020
    1031日以降はcomicoで新たに購入・読み始めることができません。
  3. 当然のことながら「それでも蝶は舞う」の最終話までのネタバレを大いに含んでいます。

以上、ご理解の上でお読みいただきますようお願いいたします。

あらすじ

ざっくりとしたあらすじはこちら。

御年70歳になるシムさんには、人生で唯一やり残したことがあった。
それは「バレエ」をやること!
家族の驚きや反対(と自分の体力)を押し切って、シムさんは無事バレリーノになれるのか!?

comico – それでも蝶は舞う より

そんなわけで、主人公は70歳のおじいちゃん、シム・ドクチュルさん(以下、シムさん)です!

シムさんが70歳になってからバレエを始めるところから物語が始まるわけなのですが、普通に考えたらなかなかいいお年ですよね。

そんなシムさんが、「どうしても!」とバレエ教室に頼み込んで入団させてもらうことになります。

バレエ団に入ったシムさんに直接バレエを教えてくれることになったのはイ・チェロク(以下チェロク)という23歳の青年です。

この二人が中心となって物語が動いていきます。

チェロクがシムさんにバレエを教える一方で、シムさんはバイトにバレエに忙しいチェロクの面倒を見てあげる…というような関係になっていきます。

そんな中、ある日チェロクはシムさんがいつも持ち歩いているメモ帳を見てしまいます。

そこにはシムさんが認知症だということが書かれていました。

認知症の症状と闘いながらも幼いころに憧れた「バレエをやりたい」という強い気持ち。

そして、日々思い出せないことや忘れてしまうことが増えてしまう(突然毎日通っていた道が分からなくなったり、知っている人を思い出せなくなったり)ことへの恐怖。

家族に認知症だとなかなか打ち明けられない苦しみ。

シムさんが認知症の症状の進行に抗いながら、必死に夢を追う姿が丁寧に描かれています。

また、そんなシムさんを陰ながら見守り、支え、誰よりもシムさんのバレエを応援してくれるチェロクの姿にも胸が打たれます。

そして、認知症の症状が進行する一方で、シムさんのバレエ人生にも転機が訪れます。

シムさんとチェロクの二人で、バレリーノとして舞台に立つことが決まります。

それに向けて二人で練習していきますが…本番前日に認知症の症状が悪化、バレエのこと、チェロク以外の仲間のこと、奥さん以外の家族のこと、多くのことを思い出せなくなってしまいます。

それでも、「バレエがしたい」と涙ながらに訴えるシムさん。

そしてそんなシムさんと舞台に立つことを決心するチェロク

二人の舞台はどうなるのか…!?という感じの物語です。

さらに、24話までのみどころをピックアップした公式のページを見つけました!

漫画の雰囲気がより一層伝わりやすいので、こちらもぜひ読んでみてください♪

りんご
りんご
絶対本編読みたくなること間違いなしですよ!

 

圧巻の最終話!個人的グッときたポイント

二人の公演がBGMと共に楽しめる!

webコミックならでは楽しみ方ですが、comicoアプリから最終話を読むと、BGMが流れるようになっています。

シムさんとチェロクが踊る、パ・ド・ドゥ「人生」の楽曲となっているようで、曲に合わせて読み進めることができます!

静止画の連続だけれど、まるで動画を見ているかのような躍動感と、ドラマチックなBGM、そして「人生」というタイトルの二人の演舞。

作者様の画力と演舞の描き方が本当に美しい。

最終話まで読み進めてきたらセリフや説明がなくても感じる、シムさんとチェロクのこれまでの人生。

本当に圧巻というか、心を無にしてただただ感じてほしいです。

ちなみに、ハンカチとティッシュを準備されることをおすすめします(笑)。

 

ここでこの表現はずるい!床じゃなく「水面」になる瞬間

最終話の演舞の中でも、シムさんが床に着地したときに、床ではなく「水面」で描かれれているシーンがあります。

これは31話でチェロクが「バレエは床の上でするんじゃなくて、水の上でするようなイメージ」だと言っているのが元ネタですね。

「足が水に沈まない。一流のダンサーほどそんな感じで舞う」

31話の時点でシムさんはいまいちピンときていない感じでしたが、最終話のあの舞台の上でまさしく、足が水に沈まず水面を水切りするように舞っているんです。

りんご
りんご
ここでこんな表現絶対泣くよおおお!

 

二人の演舞を見守る周囲の人々の表情に読み手も涙

この漫画はシムさんとチェロクが中心人物ですが、奥さんもソンサン(長男)もソンサンの奥さんも、ヘジン(孫)も、ソンガン(次男)も、金髪のソンチョルも、チェロクのお父さんも。

ムン先生も、スンアも、ジョンファンも、ヒロシも。

時にはシムさんやチェロクの壁となってしまったこともあったけれど、みんながこの二人の演舞をみて二人がそれぞれ懸命にこの舞台に臨んでいる姿に胸を打たれているんですよね。

あれだけバレエに反対していたソンサン(長男)の目に涙ですよ…。

そりゃ彼だってシムさんの息子で、シムさんを父親として大事に思っているわけですから当然といえば当然ですけどね…。

そして、同じくバレエに反対していた(?)チェロクのお父さんも、彼が本気で臨む姿にハッとさせられ、演舞後には穏やかな表情で拍手を送っています。

シムさんとチェロクの努力と本気が伝わったんでしょうね。

これで心が揺さぶられないわけがない。他の誰でもない、家族ですから。

りんご
りんご
もおおおお何このやさしい世界…!!

 

7年後のチェロクが未だにピンクのセーターを着てる

51話で日頃からシムさんを見守ってくれているチェロクへ、ソンサン(長男)の奥さんとヘジン(孫)からピンクのセーターをプレゼントされていました。

りんご
りんご
二人の天使?が描かれたラブリーなアレ!ソッコーで脱ごうとしてたやつね!(笑)

あれを、未だに着てくれているんですよね。

立派なバレリーノになってロシアから韓国に凱旋、メディアのインタビューに答えてるっていうのにあのピンクのセーターですよ。

チェロク、シムさん一家のこと好きすぎでしょ

何なのチェロク…どこまでいいやつなの…泣かせんなよ…!

普段は着てないのかもしれませんが、7年ぶりのシムさん一家との再会のために着てきたって思ったらなにそれやばい。

 

夢を掴んだチェロクと、夢を忘れてしまったシムさんの対比

夢を実現させ立派なバレリーノとなったチェロクは、韓国での公演のあとシムさんに会います。

シムさんの奥さんや孫のヘジンの話だと、「バレエをしていたことすらも思い出せないから、チェロクのことを忘れてしまっていても気にしないで」ということでした。

驚くことも、落胆することもなく。落ち着いた様子で、そして笑顔で「こんにちは」とシムさんに自己紹介をするチェロク。

けど、シムさんはチェロクのことを覚えていないどころか、会話にもなりません。

りんご
りんご
認知症の残酷さを改めて感じさせられます…。

「シムさん…ただいま」

そうシムさんに声をかけて、涙を浮かべながら微笑むチェロク。

チェロクはきっと、シムさんがこうなっているだろうと理解して受け入れていたんでしょうね。

バレリーノになって飛び立つ!という夢を現実にするきっかけをくれたシムさんはチェロクにとって人生の恩人…そして、もう一人のお父さんのようで親友のような存在だったんだと思います。

彼の「ただいま」で締めくくられる最終話にこれまた涙…。

りんご
りんご
バレリーノとして飛び立ったチェロクが帰ってくる場所は…シムさんのところだったんだね…。

 

夢があるなら絶対心に響く!「それでも蝶は舞う」名言5選!

もはやこの漫画は何話を読んでも、「いいこと言うなあ…」「心に響くなあ…」と思う名言集みたいな感じですが、特にこれは名言中の名言!と思ったシムさんの言葉をピックアップしてみました!

自分自身が惨めだと思った瞬間、人は惨めになる

元同級生にひどい言われようだったチェロクを心配して声をかけるシムさんの言葉です。

チェロク…人が惨めになるのはどんな時だと思う?

やりたくもないつまんねえ仕事をやってる時?

目標や夢を分かってもらえない時?

そうじゃない。自分自身が惨めだと思った瞬間、人は惨めになる。

comico – 「それでも蝶は舞う」13話より

周りのみんなは成功や幸せをつかんでいるのに、自分はなんでこんなに何もかもが上手くいかないんだろう。

そんな風に思い詰めたことが筆者自身もよくありました。

そして同時に「惨めだな」って思っていたんですよね。

周りのみんなが幸せそうだから自分が惨めに感じるのだと思っていたんですけど、そうじゃなくて、自分が勝手に惨めだなって思ってるだけだったんです。

誰も惨めだなんて言ってないのにね。

自分で自分を可哀そうって思ってしまうと、可哀そうで惨めな人になってしまう。

わたしはネガティブなタイプなんですが、ちょっとハッとさせられましたね。

結局自分で自分の首を絞めてるみたいな…。

人生の先輩であるシムさんの言葉は、より一層心に響きます。

 

人生は一度きりだ。たったの一回だけだぞ

18話のシムさんとチェロクの会話から。

チェロク…人生は一度きりだ。たったの一回だけだぞ。

やると決めたからには全力でやるんだ。じゃなきゃ後から未練が残る。

やりたくてもできなくなることもあるし、やりたいことが何だったのか思い出せなくなるかもしれない。

本当に怖いのはそういうことだ。できるのに迷ってんのはたいして怖いもんじゃねえ」

comico – 「それでも蝶は舞う」18話より

というか、この18話での二人の会話がそもそもすごくイイんですよ…!

このシムさんの名言の前に、チェロクが「バレエという夢を追ってもいいのか?」という心の葛藤が語られているんですが、このチェロクの気持ちに共感できる人も多いと思います。

そんな時にシムさんからこんな言葉をかけられたら…ねえ…?(何)

この会話を交わしていた時、チェロクはまだシムさんが認知症だとは知りません。

一読者として読み始めた時も、まさかシムさんにそんな事情があるとは思っていなかったので、「心に響くなあ…人生経験豊富な分、言葉の重みが違うなあ…」と思いました。

けど、認知症のシムさんが夢のある若者に対してかけた言葉だと思ったら、言葉の重みがもうね、ググッと重くなります…!

もし君が夢を持たないなら雑草と何が違うだろう

かみ合っていないようでかみ合っているシムさんとキヨシの会話からです(キヨシは日本人)。

もし君が夢を持たないなら雑草と何が違うだろう。

そんなセリフを聞いたことがある…。

キヨシには丈夫な体があって 情熱もあって 目標も夢もある

人ってのはもしかしたら…それだけあれば十分なんじゃねえのかな。

comico – 「それでも蝶は舞う」37話より

りんご
りんご
こんな言葉を聞いたら、わたし、本当に十分すぎるほど持ってるなって思っちゃう…!

シムさんの言う通り、夢と情熱、そしてそれを成し遂げるための肉体(自分自身)さえあれば人って十分幸せなのかも。

本当にそう思えてくるのが不思議なところですね。

シムさんのこの言葉はバレリーノであるキヨシに向けた言葉だから、「丈夫な体」って言っていますが、この部分は「自分自身」に置き換えても良いとわたしは思います!

夢のある人生ほど豊かなものってきっとないのでしょうね。

シムさんやチェロクたちを見ていたらより一層そう思わされます。

イショラス(もう一度)

ロシアのバレリーノであるミハイル先生が現役時代に夜中までずっと練習していた時に、何度もつぶやいていた言葉であり、チェロクにも何度も「イショラス(もう一度)」と言って踊らせていました。

そして後日、今度はシムさんの練習をミハイル先生が見ていた時。

うまくいかずに転んでしまったシムさんですが、立ち上がってこう言います。

「あはは…うまくいかねぇな。

もう一度やってみますね、ミハイル先生。

ふう~、さて…イショラス

comico – 「それでも蝶は舞う」47話より

チェロクはミハイル先生から「もう一度」と言われて躍っていましたが、シムさんは自分から「イショラス(もう一度)」と言って踊っていました。

現役時代のミハイル先生も一人で「イショラス」とつぶやき、そして何度も何度も踊っていたのです。

失敗や挫折を味わっても、自分で立ち上がって「イショラス」と言える、そして挑戦できるのって簡単なことじゃないですよね。

それこそ、一度や二度じゃない。何度も何度も。

シムさんの「イショラス」は心にきますし、「わたしも頑張ろう、できる!」って思わされます。

 

楽しくて幸せだけど、怖くて緊張して失敗すると悔しいのは夢だから

元々はシムさんの言葉ですが、チェロクは金髪のソンチョルにこの言葉を掛けに行っているんですよね。

夢に向かって本気で挑むチェロクに感化され、シムさんに後押しされて、もう一度本気でサッカーを始めたソンチョルですが、あと一歩でテストに落ちてしまって悔しがっています。

そんなときにチェロクが彼にかけたシムさんの言葉です。

楽しいだけなのはただの趣味なんだって。

楽しくて幸せだけど、怖くて緊張して…失敗すると悔しいし腹が立つのは

それは夢だからなんだって。

comico – 「それでも蝶は舞う」50話より

ソンチョルは入団テストを受ける前にシムさんに「入団テストを受けるんだけど、でもなんか怖い」と、素直な自分の気持ちを表しているんですよね。

そして残念ながら落ちてしまったわけですが、悔しいし腹も立てている様子。

チェロクがソンチョルに「サッカーをもう一度始めたのがただの暇つぶしじゃなくておめでとう」とお祝いをしに行っていますが、ソンチョルはちゃんと夢に向かって一歩前進できていたのです。

同じように「夢」に向かって努力するからこそ、チェロクにはそれがよく分かったのでしょう。

真剣に夢と向き合って努力しなければ、怖いと思うことも、悔しいと思うこともきっとありません。

わたし自身も、やりたいこと・夢のはずなのに、いざ向き合うと怖かったり不安だったり、決してキラキラまぶしいものだけじゃなくて。

わたしには向いてないんじゃないか?

この程度で怖がって前に進めないのなら、もうやめたほうがいいんじゃないか?と悩んだことがありました。

けど、夢だからこそ怖かったり不安に思うことがあって当然なんだなあと、シムさんの言葉に救われた思いでした。

「夢」を表す素敵な名言だなあって思います!

 

「人生」と「夢」をテーマにした名作は必見!

筆者の中で、おそらく「それでも蝶は舞う」は一生忘れられない作品になると思います。

定期的に読み返しては、泣いたり背中を押してもらったり、励まされたり…。

この漫画に出会えたことが人生の財産だと思えるほどです。

りんご
りんご
ブログを始めるきっかけも、「それでも蝶は舞う」だったりします…!

認知症になってしまったシムさんが、悩み闘いながら夢に挑む姿は、わたしたちに感動と勇気を与えてくれます。

綺麗すぎない現実味のあるストーリーは夢や感動だけでなく、もしも自分の家族がこうなってしまったら?将来自分が認知症になってしまったら?と考えさせられる部分もあります。

作画・ストーリー共に完成度の高い名作。

韓国や日本だけに留まらず、もっともっとたくさんの人に届いてほしいです!

ぜひ、気になられたかたは読んでみてくださいね!